家づくりを始めると、「断熱等級」や「UA値」という言葉をよく目にするようになります。断熱材の種類や窓の性能を比べ、「これで暖かい家になる」と安心している方も多いでしょう。
ところが、住宅の性能を本当に左右する要素なのに、あまり説明されないものがあります。
それが「気密」です。
<1>「高断熱住宅なのに寒い」は珍しい話ではない
「断熱性能の高い家を建てたはずなのに、冬になると足元がスースーする」
「エアコンをつけても、なかなか部屋が暖まらない」
新築に住み始めた方から、こうした声を聞くことがあります。断熱材はしっかり入っていて、窓も高性能。計算上の性能は十分です。それでも寒いのはなぜでしょうか。
多くの場合、原因は家の「すき間」にあります。
どんなに厚いダウンジャケットでも、前のファスナーが開いていれば冷たい風が入ってきます。家も同じで、断熱材で包んでいても、すき間があればそこから暖かい空気は逃げ、冷たい空気が入り込みます。
<2>気密とは:家のすき間がどれだけ少ないか
気密とは、建物のすき間の少なさのことです。数値ではC値(相当隙間面積)で表し、「床面積1㎡あたり何㎠のすき間があるか」を示します。
数字が小さいほど、すき間が少ない家です。延床面積120㎡の家で考えると、次のようになります。

ここで知っておいていただきたいことがあります。
現在の省エネ基準には、気密性能(C値)の基準がありません。以前は国の基準に目安がありましたが、2009年の改正で削除されました。
そのため「省エネ基準適合」「断熱等級〇」と書かれた家でも、気密性能は会社によって大きく違うのが実情です。これが「誰も教えてくれない」理由のひとつです。
<3>住んでから実感する気密のメリット
気密の良し悪しは、図面やカタログでは見えません。違いが分かるのは、住み始めてからです。
① 足元が冷えない
暖かい空気は上へ昇り、すき間から外へ逃げていきます。その分、床付近のすき間から冷たい外気が引き込まれます。気密性が低い家で「頭はぼんやり暖かいのに足元が寒い」状態になりやすいのはこのためです。
② 冷暖房がよく効き、光熱費を抑えやすい
せっかく暖めた空気がすき間から漏れなければ、少ないエネルギーで快適な室温を保てます。断熱性能を、計算どおりに発揮させる土台が気密です。
③ 換気が計画どおりに働き、空気がきれい
今の住宅には24時間換気が義務付けられています。ところがすき間が多いと、空気は換気口ではなく近くのすき間から出入りしてしまい、部屋の奥の空気が入れ替わりません。「きれいな空気」も、気密があってこそ実現します。
④ 壁の中の結露を防ぎ、家が長持ちする
室内の湿った空気がすき間から壁の中に入ると、冬場に内部結露を起こすことがあります。結露は断熱材の性能低下やカビ、構造材の傷みにつながります。気密は、住む人だけでなく家そのものを守る性能です。
⑤ 外の音が入りにくく、静かに暮らせる
音は空気を伝わってくるため、すき間があればそこから室内に入り込みます。すき間が少ない家は、車の走行音や近所の生活音が気になりにくく、室内の音も外に漏れにくくなります。
「暖かい」「涼しい」「空気がきれい」「静か」。毎日の暮らしで感じるこうした満足感は、実は気密性能に大きく左右されています。
<4>気密は「材料」ではなく「施工力」
断熱性能は、どんな断熱材や窓を使うかで、ある程度設計段階で決まります。一方で気密性能は、現場でどれだけ丁寧に施工したかで決まります。
・気密シートの継ぎ目をきちんと重ねて、テープで処理しているか
・配管や配線が壁を貫通する部分を、ひとつずつ塞いでいるか
・コンセントボックスやサッシまわりの処理を省いていないか
・職人さん全員が、気密の意味を理解して作業しているか
同じ材料、同じ設計でも、施工する人と会社の姿勢次第で、C値は何倍も変わります。気密は、その会社の「現場力」がそのまま数字に表れる性能です。
<5>気密測定をしよう:数字で確かめられる唯一の性能
断熱性能(UA値)は、設計図をもとに計算で求める数値です。一方、気密性能(C値)は計算では出せません。実際の建物で測定して、はじめて分かる数値です。
気密測定では、窓などに専用の送風機(ファン)を取り付け、室内の空気を外へ排出します。空気を排出すると室内の気圧が外より低くなり、家中のすき間を通じて、外から空気が入り込んできます。気密測定は、この現象を利用してすき間の量を計測する方法です。

測定のタイミングとしては、次の2回が理想です。
■中間測定(断熱・気密工事の完了後、内装を仕上げる前):すき間が見つかっても、この段階ならその場で補修できます。
■完成測定:引き渡し前に、最終的な性能を確認します。
これから家づくりを考える方は、住宅会社にぜひこう聞いてみてください。
「気密測定は全棟で実施していますか?」
「これまでの平均C値はどれくらいですか?」
この質問にすぐ答えられる会社は、気密を大切にしている会社です。
<6>気密測定中に確認したい箇所
気密測定には、ぜひ立ち会ってみてください。先ほど説明したとおり、測定中はすき間があるところから外の空気が室内へ流れ込んでいます。
気になる場所に手をかざしてみると、すき間がある箇所では「スーッ」と風を感じます。冬なら冷たい風としてはっきり分かることもあります。図面や数字だけでは見えない施工の丁寧さを、自分の手で確かめられる貴重な機会です。
特にすき間ができやすいのは、次のような場所です。

内装を仕上げる前の中間測定なら、すき間が見つかってもその場で補修できます。完成後の測定では、コンセントや照明、点検口、窓・ドアまわりを中心に確かめてみるとよいでしょう。
なお、測定中は換気口などがテープでふさがれています。これは決められた測定方法(JIS A 2201)によるもので、計画的に設けた換気の穴を除いて、建物そのもののすき間を測るためです。
断熱は、家に着せる「上着の厚さ」。気密は、その上着の「ファスナーをきちんと閉めること」。どちらが欠けても、本当に快適な家にはなりません。
<7>気密性能を高める工法について詳しく知りたいなら、ウッドリンク・ラボに見に行こう!
今回のコラムでは、気密は「施工力」で決まるとお伝えしましたが、施工力を現場の職人の腕だけに頼らない仕組みがあります。工場生産の精度の高いパネルを使う工法を採用することです。これにより気密施工のハードルを下げることが可能で、大工さんの腕次第にならない、安定した品質の家をつくることができます。
この工法について詳しく知りたいという方は、ウッドリンク・ラボにお越しください。
気密はもちろん、耐震・断熱・耐久性といった言葉や数字だけではなかなかイメージしにくい「家の性能」について、実際に見て、触って、体験・体感しながら学べる施設です。工場でつくるパネルの精度や、すき間ができにくい工法のしくみも、実物を前にご紹介します。
家の性能は、建ててからでは気軽に変更できません。後悔しない家づくりの第一歩として、ぜひご家族で体感しにお越しください。
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