
地震、台風、大雨――近年、私たちの暮らしを脅かす災害は頻度も規模も増しています。そのたびにテレビで映し出されるのは、体育館に敷かれた段ボールベッドや、長い列をつくる給水車の光景。しかし、災害が起きたときに取れる選択肢は「避難所へ行く」ことだけではありません。
災害後もできる限り普段に近い暮らしを自宅で続ける「在宅避難」という考え方が、いま注目されています。プライバシーが保たれ、住み慣れた環境で過ごせる在宅避難は、特に小さなお子さまや高齢のご家族、ペットがいるご家庭にとって、大きな安心につながります。
そしてこの在宅避難を実現するカギを握るのが、住宅の「レジリエンス」です。
今回はこれから新築を検討される方に向けて、レジリエンスとは何か、そしてどのように家づくりに取り入れていけばよいのかを、順を追ってご紹介します。ぜひ最後までお付き合いください。
<1>そもそも「レジリエンス」とは何か
レジリエンスとは、もともと「回復力」や「しなやかな強さ」を意味する言葉です。住宅における“レジリエンス”とは、単に「地震で壊れない」「台風で飛ばされない」といった躯体の強さだけを指すものではありません。災害が起きた後も、電気・水・食料といったライフラインが一時的に止まった状況でも、家族が安全に、そして健康を損なうことなく生活を継続できる性能まで含めた考え方です。
<2>家族の安全と健康を守り続けられる住宅とは
住宅に求められる安全性は、「災害が発生した瞬間」と「発生した後」の二つの局面に分けて考える必要があります。発生した瞬間に家族の命を守るのは、地震で倒壊しない構造性能や、台風による強風・飛来物への備えといった、命に直結する基本性能です。
一方、発生した後の生活の質を左右するのは、断熱・気密性能による室温の安定や、断水・停電が続く中でも衛生的で安全に過ごせるための工夫です。停電でエアコンや暖房が止まっても、断熱性能の高い家であれば室内の温度変化は緩やかで、体への負担を抑えられます。特に高齢の方や乳幼児、持病をお持ちのご家族がいる世帯ほど、環境の変化が体調に大きく影響します。慣れた自宅で、普段と近い温度環境の中で過ごせる在宅避難は、こうしたご家庭にとってメリットの大きい選択肢です。
また断熱・気密性能が高い住宅は、平常時にも「ヒートショックなどの身体的なリスクを減らせる」「冷暖房効率が高まることで光熱費を抑えられる」といった日々の暮らしそのものが快適で経済的になる利点もあります。
つまり住宅のレジリエンスとは、「もしものための特別な設備」ではなく、「日々の暮らしの質を上げながら、いざというときにも家族を守れる家づくりの考え方」だと思います。

<3>季節で変わる在宅避難の注意点――夏場・冬場のポイント
在宅避難で気をつけるべきポイントは、季節によって大きく異なります。
■夏場の在宅避難
停電によってエアコンが使えなくなると、閉め切った室内の気温は短時間で危険な水準まで上昇することがあります。特に断熱性能が低い住宅では、この上昇スピードが速く、熱中症のリスクが高まります。
そこで重要になるのが、断熱性能に加えて、庇や軒の出、外付けブラインドや簾といった「日射遮蔽」の工夫、そして風の通り道を考えた窓の配置による「通風計画」です。電気に頼らずとも太陽の熱を室内に入れず、風で熱気を逃がせる設計であれば、停電時でも室温の上昇をある程度抑えることができます。
■冬場の在宅避難
冬場は逆に、暖房が使えなくなったときの室温低下が問題になります。断熱・気密性能が低い住宅では、暖房が止まった途端に室温が下がり、低体温症やヒートショックのリスクが高まります。一方、高断熱・高気密な住宅は、外気の影響を受けにくいため、暖房が止まっても室温の低下が緩やかで、体への負担を抑えられます。重ね着や一室に集まって過ごすといった対処法だけに頼らずに済む点も、大きな安心材料です。
夏も冬も共通して言えるのは、「電気が止まっても、住まいそのものが普段に近い状態に保ってくれる」ことが、在宅避難を無理なく続けるための土台になるということです。
<4>【対策編】レジリエンスな家づくりは3段階で
では、何から手をつければよいのか。ここからは、優先順位をつけた3つのステップとしてご紹介します。予算やタイミングに応じて、できるところから着実に取り入れていただければと思います。
ステップ1:住宅性能+設計の工夫
家づくりの土台となるのが、この段階です。特に次の5つは、新築時にこそしっかり作り込んでおきたいポイントです。
耐震性能:
まず命を守る耐震等級3などの構造性能です。建物の被害そのものを抑えることが、そのあとの在宅避難を可能にする大前提になります。また建物自体の被害が少ないほど、修繕費用も抑えることができます。
断熱性能:
壁や窓などからの熱の出入りを抑える性能です。停電で冷暖房が止まっても室温の変化が緩やかになり、夏の熱中症や冬の低体温症・ヒートショックのリスクを抑えられます。
冬場の停電・暖房停止時を基準に考えると、目安になるのは「断熱等級6以上」です。
気密性能:
家の隙間をなくし、断熱性能を十分に発揮させるための性能です。気密性が低いと、いくら断熱材を入れても隙間から熱が逃げてしまい、本来の断熱効果が得られません。
日射遮蔽:
庇や軒の出、外付けブラインドや簾といった、太陽の熱を室内に入れにくくする工夫です。電気に頼らずに夏の室温上昇を抑える手段になります。
通風計画:
風の入り口と出口を意識した窓の配置です。停電時でもエアコンに頼らず熱気を室外へ逃がせる設計につながります。
これらはいずれも、間取りや構造、窓の位置といった設計の初期段階で決まるものです。完成後のリフォームでは実現が難しかったり、大きなコストがかかったりする部分だからこそ、家づくりの最初の打ち合わせの段階からしっかりと検討していただきたいポイントです。
ステップ2:普段からの備蓄と、備蓄スペースの確保
災害対策として、水・食料・簡易トイレ・モバイルバッテリーなどを普段から備蓄しておくことは大前提です。その際は、普段から使っている食品や日用品を多めに買い置きし、使った分だけ買い足すローリングストックが理想的であり、それらを無理なく収納できるスペースを新築時に計画しておくことが大切です。
具体的には、キッチン横のパントリー、床下収納、玄関脇の土間収納、アウトドア用品もまとめて置ける収納スペース、屋外の物置スペースなどが挙げられます。「備蓄したいけれど置き場所がない」という悩みは、新築段階で間取りに組み込んでおくことで解消できます。

ステップ3:太陽光発電・蓄電池があれば、さらに安心
太陽光発電システムがあれば、停電時にも冷蔵庫やスマートフォンの充電といった最低限の電力を確保でき、在宅避難の安心感は大きく高まります。さらに蓄電池を組み合わせることで、夜間の照明や短時間であればエアコンも使えるようになります。
加えて、平常時は自家消費や売電による経済的なメリットも得られるため、災害対策と日常の光熱費対策を両立できる設備でもあります。予算に余裕があれば、ぜひ検討したいステップです。
ここまで見てきたように、住宅のレジリエンスとは、後から付け足す特別な防災グッズのことではなく、新築時の性能・設計・間取りの計画そのものに組み込むべき「暮らしの土台」です。
耐震・断熱といった基本性能、通風や日射遮蔽の設計の工夫、備蓄とそのスペース、そして太陽光発電・蓄電池。これらをまとめて検討できるのは、まさに家づくりの最初の段階だからこそです。「災害に強い家」であると同時に「毎日が快適な家」でもある。それが、これからの新築住宅に求められるレジリエンスのかたちです。
<5>災害に強い家の住宅性能について詳しく知りたいなら、ウッドリンク・ラボに見に行こう!
耐震性能や断熱性能、住宅の耐久性は、カタログの数値やスペック表だけではなかなか実感しにくいものです。「説明を聞いてもいまひとつピンとこない」という方も多いのではないでしょうか。
そこで是非体験していただきたいのが、実際に見て、触れて、体感しながら住宅性能を学べる体験型施設―ウッドリンク・ラボです。耐震構造の仕組みや、さまざまな断熱材による違い、長く安心して住み続けるための耐久性への工夫などを、専門スタッフの説明とともにご自身の目と手で確かめていただけます。
ご家族に合った「在宅避難できる家」のかたちを、ぜひ一度、体験型施設で確かめてみてください。見学のご予約お待ちしております。
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