こんにちは。北陸型木の住まい研究会の多賀です。
冬になると窓の結露に悩まされるという方がいると思います。でもちょっと待ってください。窓の結露よりもっと怖い結露が知らないうちに家を蝕んでいるかもしれません。
今回は大切な家の寿命を縮めてしまう「壁体内結露」をテーマに、壁体内結露はなぜ発生するのか、また発生させないためにはどうしたらよいのかを解説します。
是非最後までお付き合いください。
<1>壁の中の結露被害とは?
<2>なぜ結露は起こるのか?
<3>壁の中で結露を発生させない方法とは?
<1>壁の中の結露被害とは?
窓の表面で起こる結露はほとんどの人が見たことがあると思います。冬の明け方、寝室の窓での発生が特に多いシチュエーションです。短時間の発生であれば自然に乾いてしまうので特にどうということもないのですが、これが長時間濡れたままだとカビの発生に繋がってしまい健康を害してしまいます。
また水滴が垂れてきて壁紙がシミになったりすることがあるため、細めに水滴を拭き取っているという事例も聞きます。毎日のこととなれば大変な労力ですね。
窓の表面の結露は面倒ですがまだ対処が可能です。
しかし結露が目の届かないところで発生しているとしたらどうでしょう。対処もできず濡れたままだと、カビや腐朽・シロアリの発生に繋がり、家を害することになります。
それが壁の中で結露が発生してしまった場合です。
壁の中で結露が起こると最終的にどうなるのか、お見せいたします。
日経ホームビルダー2002年9月号 「断熱施工の落とし穴」より抜粋
これは特にひどい事例です。
築15年の物件ですが壁体内結露が発生した結果、木材を腐朽させています。
このように壁の中で発生した結露は気づかれにくく、いつの間にか被害が進行しているため非常に怖いものです。
<2>なぜ結露は起こるのか?
空気は水蒸気を含んでいますが、温度によって含むことができる水蒸気の量が変わります。
空気が冷やされることで、空気中に含むことができなくなった水蒸気(飽和水蒸気)が水滴となって現れるのが結露です。
窓で結露が発生しやすいのは、ガラスを隔てて外と室内が隣り合わせることとなるため、冷たい窓に室内の空気が急激に冷やされるためです。
では、断熱材がたくさん入っているはずの壁の中で、なぜ結露が発生するのでしょうか。
壁の中は外に近づくほど温度が下がっていきます。
ここに室内の水蒸気をたくさん含んだ空気が入りこむと、外側へ行くほど冷やされ、だんだんと飽和状態に近づいていきます。そして水蒸気を含んだ空気が外に排出されないと、外に近い場所で結露が発生することがあるのです。
<3>壁の中で結露を発生させない方法とは?
では壁の中で結露を発生させないためにはどうしたら良いのでしょうか。
対策をご紹介します。
まず第一に、水蒸気を多く含んだ室内の空気を壁の中に入れないことが大事です。
そのためには断熱材の室内側で防湿・気密工事を行って、「防湿・気密層」をつくります。
家の気密性を高める「気密工事」については聞いたことがあるかもしれませんね。気密工事では壁や床、天井の隙間を塞いで、隙間から空気が出入りしないようにします。
しかし断熱材の中には隙間がないように見えても水蒸気を通してしまう素材があるため、気密工事だけでは不十分です。そのような透湿性のある断熱材の場合は、室内側に「防湿気密シート」を全面に貼って、水蒸気の流入を防ぐ必要があります。
最初の事例のグラスウールは透湿性の高い断熱材であるため、このシート施工が必須となっています。また最近良く使われている発泡ウレタンも、透湿成の高い断熱材に該当するものがあります。隙間に入り込んで固まるため気密性を高める効果はありますが、発砲し過ぎた箇所を削り取るとそこから水蒸気が入り込みやすくなるので注意が必要です。
次に、万が一壁の中に水蒸気が入り込んだ場合でも、すぐに外に排出できるようにすることです。
一般的な壁構成では、断熱材の外側に通気層と呼ばれる空気を通す層を設けます。この層があることで、壁の中に入り込んだ水蒸気を結露する前に逃がすことができます。
先に紹介した壁体内結露事例の物件は、防湿層がなく、タイル張りのため通気層もない物件でした。
2つの対策が行われていない物件で、実際に壁体内結露が発生していました。
また通気層はあっても、断熱材と通気層の間に水蒸気の通過を妨げるものがあると、水蒸気がうまく排出されずせき止められて、結露する可能性が高くなってしまいます。この妨げとなるものは、例えば合板などです。
外側に合板がある構成が全て結露するわけではありませんが、室内側の防湿と外側の透湿のバランスが重要になるので、このような構成の場合は「結露計算」を行って、水蒸気がうまく排出されるかを確認しておくことが必要です。
壁の中の結露発生を防ぐためには、「壁の中に水蒸気を入れない」「水蒸気が入ってもすぐに出す」の2つの対策を行っておくことです。
現在建てられている住宅ではこれらの対策は、当たり前に行われているはずです。
ですが一部ではこれらの当たり前がアップデートされていない会社があるのも事実です。
また工事を行うのは人間ですから、常に毎回完璧な工事が行えるとは限りません。どんなに気を付けていても施工が不十分な箇所から水蒸気が壁の中に入ってくることはあります。
そんな不安を解消するためのもう1つの対策として、水蒸気を通しにくい断熱材を採用すると安心です。フェノールフォームやポリスチレンフォームといった板状の断熱材は水蒸気を通しにくいためお勧めです。
あなたの家を壁体内結露から守る頼もしい味方として、是非採用をご検討ください。
<まとめ>
壁体内結露は壁の中で気づかれないうちに進行してしまうため、気づいたときには木材が腐っていたということが起こる怖い結露です。壁体内結露を発生させないためには、「壁の中に水蒸気を入れない」「水蒸気が入ってもすぐに出す」、さらに「水蒸気を通しにくい断熱材の採用」の3つの対策を行うと安心です。壁の構成や断熱材の種類についてはあらかじめ確認可能ですが、気密工事の精度については現場の状況に左右されてしまいます。心配な場合は気密測定を行うことで確認することも可能ですので、住宅会社さんに聞いてみてください。
水蒸気を通しにくい断熱材については、ウッドリンク・ラボでも実験を通して確認することが可能です。
気になった方は是非見学にお越しください。