家づくりお役立ち情報

木の住まいコラム

HOUSE BUILDING
INFORMATION

制震装置は本当に必要?

こんにちは。北陸型木の住まい研究会の田村です。

昨今、日本各地で地震が発生し、新築住宅を建てる際に耐震性能を重視される方も多いでしょう。
一方で地震対策は専門用語が多く、対策方法も幅広いため、「結局何が良いのかわからない」「最終的に営業マンにお任せする」となるケースもあります。
今回は、「耐震と制震のちがい」をテーマに制震装置は本当に必要なのかを解説します。

<1>耐震と制震のちがい
<2>制震装置は本当に必要?
<3>制震装置の効果は?

<1>耐震と制震のちがい

耐震とは、住宅の構造部分(骨組み)の強度を高めることで建物の倒壊を抑止することをいいます。
壁の中に筋かいを入れたり、部材の接合部を金具で補強したりすることで強度を高めることができます。あくまでも建物の倒壊を防止することが目的であるため、損傷する可能性がなくなったり地震の揺れによるダメージを減らしたりする効果はありません。

制震とは、地震による揺れを抑制することで構造躯体の変形や損壊を防止することをいいます。建物の内部に制震装置を設置することで地震による揺れを小さくします。制震装置がブレーキのような役割をすることで揺れを小さくし構造躯体にできるだけダメージを与えないようにする働きがあります。

<2>制震装置は本当に必要?

地震の揺れを吸収する働きをする制震装置ですが、「新しい住宅であれば地震に強いのでは?」「なぜ制震装置が必要なの?」と考える方もいらっしゃるかもしれません。新築住宅で制震装置の設置を推奨する理由は「繰り返し発生する地震」と「積雪時の地震」が来ても倒壊しない家にするためです。

日本の木造住宅の耐震基準は大地震が発生するたびに見直され、建築基準法は改正されてきました。
現行の耐震基準(2000年基準)は、阪神淡路大震災を背景に新耐震基準(1981年6月1日基準)の内容をさらに細かく厳格化された基準であり、中規模地震だけでなく大地震への対策も取られています。
一方で、2016年熊本地震では震度7が2回発生し、倒壊した家屋の中には2000年基準の住宅も含まれていました。各地で発生している大地震でも本震後の余震でダメージが蓄積し倒壊した家があります。
現在の建築基準法では1度の大地震に耐えることが出来ても2回以上の大地震に耐えることは想定していません。ですから、建築基準法はゴールではなく最低ラインと考え、耐震性能に加えて「プラスα」制震装置を設置することで繰り返し発生する地震に備えることが大切です。

また、北陸では冬季に積雪があり、積雪が1.0m屋根に乗った状態では、建物の揺れ幅が1.5倍になります。つまり、震度6の地震が発生した場合、積雪時は震度7程度のダメージを受ける事があるため、積雪を考慮した耐震設計が必要です。

「繰り返し発生する地震」や「積雪時の地震」でも倒壊せず、住み続けられる家づくりの観点から考えると、制震装置は設置することをおすすめします。

<3>制震装置の効果は?

住宅で主に使用される制震装置の種類はゴム、鋼材(金属)、オイル(油圧)があり壁や柱などの接合部に設置します。制震装置の効果は種類によって変わりますが、今回は鋼材(金属)ダンパーで積雪1.0m乗せた状態で震度7の地震が来た場合の損傷具合をシミュレーションしてみました。

【震度7×2を想定したシミュレーション】
積雪1.0mの荷重がある状態で震度7が2回発生した場合、制震装置あり(プレウォールTX搭載)と制震装置なし(プレウォール)では制震装置ありの方が制震装置なしと比較して建物の変形量が55%減少しました。制震装置を設置することで建物の受けるダメージが半減されています。

「制震装置を設置するか迷っている」という方は、まずはご自身のプランで倒壊シミュレーションをしてみると良いです。地震が発生した場合にどのような損傷を受けるのか事前に倒壊シミュレーションすることでダメージが大きい場所に制震装置を配置するなどの最適な対策を打つことができます。

<まとめ>

新築住宅で制震装置の設置を推奨する理由は「繰り返し発生する地震」と「積雪時の地震」が来ても倒壊しない家にするためです。日本全国では年間1,000~2,000回もの地震が発生しており、制震装置を設置し地震のたびに揺れから受けるダメージを抑えられれば、蓄積されるダメージの量は確実に少なくなり、地震の揺れに耐える力を弱らせないことに繋がります。地震時の建物の損傷は建築地の地盤特性や間取り・プラン、環境によって大きく変わるため「制震装置を設置するか迷っている」という方は、まずは倒壊シミュレーションをしてみることから始めると良いですね。

制震装置「プレウォールTX」の詳細はこちら

倒壊シミュレーション参考動画はこちら