こんにちは。北陸型木の住まい研究会の多賀です。
2024年1月1日に発生した能登地震。震度6強以上を記録した七尾、輪島、珠洲では、建物の倒壊が多く見られ、被害の大きさに驚かされました。地震被害は能登に留まらず、震源から離れた石川県の内灘や新潟市内でも確認されています。建物が基礎から傾き、酷いものでは生活が続けられないレベルの被害となっています。この被害は地盤の液状化現象によるものです。
今回は、地震の被害を拡大させる「液状化現象」をテーマに取り上げます。液状化の発生する仕組みや、発生しやすい場所、気になる液状化対策についてご紹介します。是非最後までご覧ください。
<1>なぜ液状化は起こるのか?
<2>液状化しやすいのはどんな場所?
<3>何ができる!?液状化対策
<1>なぜ液状化は起こるのか?
液状化現象とは、強い揺れによって地盤全体が泥のようになる現象のことです。
地震前には土の粒子の間に水を含んだ状態で安定していたものが、地震の振動で粒子の結合が外れ、土と水が分離します。そうなると土(地盤)は沈み水が浮き出てきて、地面に亀裂が入った箇所から水が噴き出します。
地盤の沈みは一定ではないため、住宅の沈下や傾斜、道路の変形、水道管・ガス管の破損やマンホールの浮き上がりなどが発生します。また被害は広範囲に及ぶことが多いです
能登地震における液状化被害は、石川、富山、新潟、福井の4県32市町村で少なくとも1724か所で確認されています。(防災科学技術研究所調査、2月末時点)
液状化被害は建物の倒壊と違って、直ちに人命に直結することは少ないと言えます。そのため新築時に液状化発生の可能性まで考えて対策することは、ほとんどありません。
しかし一度家が傾いてしまうと、その補修費用は莫大なものになってしまいます。
(傾き具合と補修方法にもよりますが、300~1000万円ほどかかります・・・)
今回の能登地震では、政府より液状化被害の復旧や再発防止に向けた支援策が発表されており、液状化被害のあった地区で被災者が住宅修復をする際には、国と自治体で最大3分の2の補助がでることとなっています。
それでも数百万が自己負担となってしまい、またいつ補修が完了するか分からない中、避難生活を送り続けることは大変なストレスです。
これから家づくりを始める方は、大地震発生時の液状化リスクについても知っておいて損はないでしょう。
<2>液状化しやすいのはどんな場所?
ではリスク軽減の方法についてご紹介していきます。
液状化は土地によって発生リスクが異なります。発生しやすいのは地下水位の高い砂地の地盤です。
具体的には以下のような場所が発生リスクがあると考えられます。
・埋立地
・過去に沼や川だった場所
・河川の側
・砂丘や砂丘の間にある低地
・過去に液状化を起こした場所
さらに詳しく知りたい場合は、インターネットの「重ねるハザードマップ」から土地の成り立ちを見てみましょう。住所を検索し地図を表示させ、「地形分類」から「自然地形」と「人工地形」を選んでください。色分けされた場所をクリックすると、土地の分類が表示されます。
土地の分類を下表と見比べることで液状化リスクが分かるので、土地選びの際の目安になります。
お勧めは液状化リスクの高い土地を選ばないことですが、土地選びには他にも重視することが多くあります。
交通アクセスの利便性、周辺施設、自然環境、治安の良さ、価格、子供がいれば小学校の校区なども気になりますよね。
諸条件を優先した結果、液状化リスクの高めの土地となる場合は、実際の土地でリスクを調べる方法があります。建物を建てる前に行う地盤調査の際、追加で水位測定や土質サンプリングを行う方法です。
新しい造成地など、造成の際の盛土・埋土がマップに反映されてない場合や、マップでは網羅しきれない局所的なリスクが存在する場合もあります。実際に液状化対策を行うかどうかは、建設地での調査・測定を行った上で、最終判断することが最善です。
<3>何ができる!?液状化対策
液状化リスクのある土地に家を建てることになった場合は、地盤の対策を行いましょう。
対策方法としては、以下4つの方法が代表的です。
①地下水位を下げる方法
液状しやすい砂地盤から水を抜いて液状化しないようにするもので、行政でも採用されている効果的な工法。
継続的に水を抜き続ける必要があり、ポンプの維持管理費用などがかかるため、個人で採用するには非現実的。
②薬液で地盤を固める方法
地盤に薬液を注入することで粒子の隙間の空気や水を追い出し、その間に薬液が浸透、固結することで粒子同士がくっつくという仕組み。比較的安価にでき、騒音や振動も少ない工法。
薬液がうまく浸透しないと固化しきらず、地盤にムラができることがある。
③地盤を転圧して固める方法
地盤をしっかりと転圧して土の密度を高め、振動が加わっても粒子同士が離れないようにする工法。
表層を締め固める工法、軟弱地盤中に砂を転圧し砂杭を造成する工法などがある。表層のみ転圧する工法では比較的浅い部分にしか効果がない。
④間隙水圧を下げる方法
地震発生時、間隙水(土粒子の間にある水)の水圧が上がり液状化となるところ、圧力を下げて液状化を抑制する工法。地盤中に排水柱を設けて透水性を高め、地震時には柱に間隙水を逃がすことで、圧力をすみやかに下げる方法がある。
今回は③と④を合わせたお勧めの工法をご紹介します。
◆スクリュー・プレス工法
周辺地盤を圧密しながら削孔(さっこう)し、砕石を強力な力で押圧することで、液状化しやすい緩く堆積した砂質土を締め固めます。また柱状に固められた砕石は、地震発生時には間隙水を逃がし圧力を下げます。この2つの作用により、液状化被害を軽減させる効果が期待できます。
通常の地盤改良にも採用されている工法で、液状化対策設計の場合は、砕石柱の長さやピッチを変えて対応します。通常の地盤改良に対して液状化対策を行うと、建築面積15坪の建物で約50万円のアップとなります。
建物部分だけではなく敷地全体に対策を行うことも可能です。敷地全体に行うことで、水道管や排水管といったライフライン、避難手段となる自動車を守ることも可能になります。
<まとめ>
建物の倒壊等と違い人命に直結しないことから、これまで本格的な対策がされてこなかった液状化被害。今回の能登地震でも明らかになったように、ひとたび大地震が起こるとその被害は甚大なものになります。
液状化リスクの低い土地を選ぶことが最大のリスク軽減方法ですが、調査をして土地に液状化リスクがあると分かった場合は、地盤の対策を行うようにしましょう。お勧めのスクリュー・プレス工法は、「地盤の締固め」と「間隙水圧消散」の2つの効果を同時に発揮させるハイブリッド工法で液状化被害の軽減が可能です。
数百年に一度の地震が度々発生するようになった現代では、大地震発生時のリスク軽減まで考えた家づくりをお勧めします。