こんにちは。北陸型木の住まい研究会の多賀です。
最近は電気代の高騰や防災意識の高まりを受けて、家庭用蓄電池の需要が高まっています。太陽光発電システムを導入していて、そろそろ10年の売電期間が過ぎようとしているご家庭でも気になる話題なのではないでしょうか。いまや太陽光発電システムは珍しくないですが、蓄電池はまだまだ普及段階であり、どうやって選べばいいのかわからないという方は少なくないと思います。
そこで今回は家庭用蓄電池を導入するメリット・デメリットや、目的やタイミング別でのベストな選び方についてご紹介します。
<1>家庭用蓄電池とは?
<2>導入するメリット・デメリット
<3>ケース別 家庭用蓄電池の選び方
<1>家庭用蓄電池とは?
家庭用蓄電池は電気を貯めておくことができるバッテリーで、充電することで繰り返し使うことができます。蓄電池から供給される電気で住宅内の電化製品を使用することができます。
私たちの身近にあるものでは、スマートフォンやパソコン、車やバイクに使われるバッテリーと基本は同じです。
繰り返し使えるといっても無限ではなく、「充電⇒放電」を1サイクルとしたときのサイクル数で寿命が表されます。一般的には6,000サイクルくらいのものから、11,000サイクルの高性能のものまであり、高性能品では1日2サイクル充放電した場合、約15年が寿命ラインとなります。また使っていくうちに蓄電可能な容量が減っていきます。これも数年使ったスマートフォンのバッテリーの減りが早いと感じるのと同じですね。
蓄電池に充電する電気には2つのルートがあります。
①電力会社から買った電気を充電する
夜に電力会社から電気を買って充電し、電気料金の高い昼間に蓄電池の電力を使います。
エコキュート等を設置しており、夜間の電気料金が安いプランに加入している場合に有効です。
②太陽光発電システムで発電した電気を充電する
太陽光発電システムは、電気を創ることはできても貯めておくことができません。そこで、発電しても家庭内で使いきれなかった電力(余剰電力)を蓄電池に充電、太陽光が発電できない夜間や雨天時に蓄電池の電力を使います。現在、余剰電力を売電している場合、10年の固定価格買取期間終了後はこのルートとすると有効です。
また蓄電池を導入する際、必ず必要になるのがパワーコンディショナーと呼ばれる機器です。蓄電池に貯める電力は直流ですが、パワーコンディショナーで交流に変換することで電化製品に使えるようになります。
実は太陽光発電システムにも同様にパワーコンディショナーが必要になります。太陽光発電システムと蓄電池をセットで導入する場合は、双方のパワーコンディショナーの機能を1台にした、ハイブリット式のパワーコンディショナーを設置すると、電力変換による電力ロスが抑えられるためお勧めです。
<2>導入するメリット・デメリット
導入の可否を決定する上で知っておかなければならないのは、メリットとデメリットです。
◆メリット
・電気代の節約になる
深夜電力が安いプランを契約していることが前提ですが、割安な電気を貯めて割高な時間帯に使うことで、電気代を節約することができます。また太陽光で発電した電力を充電すれば電気代は0円です。
電気料金が上がり続けている中、少しでも家計の負担を減らすには、電力の自給率を上げることが重要です。
長い期間で見れば、このメリットは大きいです。
・災害時や停電時にも電気を使える
大規模な災害時には長期間にわたり電気が使えないことも想定できます。30度を超える猛暑日に停電が起きたらどうなる?照明はろうそくやランタンで代用できても、冷房が使用できないと命に係わることも・・・。
蓄電池があれば、ライフラインとなるエアコンや冷蔵庫、スマホの充電等に貯めておいた電気を使うことができます。
停電時にどこまでの電化製品を使えるかは、「特定負荷型」「全負荷型」のどちらを導入するかで決まります。
特定負荷型は、停電時にあらかじめ決めておいた箇所のみ電気が使えるタイプです。
全負荷型は、停電時でも全ての電化製品が使えます。ただし同時に使えるのは、蓄電池の出力範囲内に限られます。またエアコンが使えるのは200V機器に対応した全負荷型のみとなるので、導入時にどこまで使いたいか考えて選定する必要があります。
また蓄電池内の電気を使い切っても太陽光発電システムがあれば再度充電できます。
太陽光に接続していない単機能タイプの場合は、貯めてある電気を使い切ったらおわりなので、災害時まで考えるなら太陽光発電とセットで導入することをお勧めします。
◆デメリット
・初期コストや買い替えのコストが掛かる
ご存じな方も多いと思いますが、蓄電池は大変高額です。容量や機能にもよりますが100~150万円が相場です。10kWhを超える容量のものになると、200万円を超えてくる場合もあります。
容量が少ないものなら価格を抑えることができますが、日常生活での使用と非常時への備えの両立は難しくなります。
またサイクル数から考えると寿命が約15年です。その間に故障しなくても、15年後には蓄電容量が当初の約60~70%まで落ちてしまいます。保証期間も15年、長いものでも20年までであるため、住んでいる間に買い替えが必要になることが予想できます。
初期費用、買い替え費用が高額になってしまうことが、一番のデメリットと言えます。
・蓄電池を置くスペースが必要
蓄電池は、豪雪地帯や塩害地域、水害リスクが高い地域では屋内設置が推奨されます。
重量があるため基本的に設置後の移動はできません。また駆動音が気になる場合があるため、寝室付近は避けて設置する必要があります。湿気がこもる水廻りも避けた方が良いです。
屋内にスペースがなく屋外に設置する場合は、直射日光を避け、風通しの良い場所への設置が必要です。
<3>ケース別 家庭用蓄電池の選び方
最後に導入するタイミングと目的別、お勧めの選び方をご紹介します。
◆これから新築、又は既存住宅で蓄電池の導入を予定している方
2050年カーボンニュートラルの実現に向け、政府は太陽光発電システムの導入を推進しています。将来的には太陽光発電システムが当たり前の時代になると予想できるため、蓄電池と一緒に太陽光発電システムも導入することをお勧めします。またこれから導入する場合は、売電単価より深夜電力の方が高くなるため、売電より蓄電池への充電を優先し、発電した電力の自家消費を高める使い方をお勧めします。
また災害時へも充分な備えをしておきたい場合や、家族が多い、高齢者や小さい子供がいる家庭では、10kWh超え全負荷型の蓄電池があると安心です。またその場合は太陽光発電システムの容量も7~8kWと、大きめにしておくと安心です。
災害時の備えより、初期費用を抑えた上で普段の生活でかかる電気代をなるべく安くしたい場合は、7kWh程度の蓄電池を設置し、太陽光の容量は5~6kW程度がお勧めです。
◆既に太陽光発電システムを設置済みで10年の固定価格買取期間終了後に向けて蓄電池の導入を予定している方
既に太陽光発電システムを導入済みの場合、蓄電池本体と蓄電池用のパワーコンディショナーを設置すれば良いのですが、パワーコンディショナー2台は変換ロスが大きくなります。パワーコンディショナーの保証期間は15年のものが多く、10年の固定価格買取期間終了後であればあと数年で保証が切れるタイミングです。思い切ってハイブリット型のパワーコンディショナーに買い替えることもご検討ください。
蓄電池の容量は新築時と同様に何を優先するかによって変わりますが、太陽光発電システムの設置容量より少し大きめの容量のものを選ぶと効率の良い使い方ができます。
<まとめ>
電気代の高騰や大規模災害への備えとして、注目が高まっている家庭用蓄電池。何を一番の目的とするかで選び方は異なりますが、太陽光発電システムとセットで設置することで電気代の節約になることは間違いありません。
最新機種では天気予報から翌日の発電量を予想、AI制御で最適なタイミングで充放電するなど、より経済性の高い使い方も可能です。また電気自動車を導入して、太陽光・蓄電池と連携させることで、さらにお得になるトライブリットシステムも登場しています。
初期費用や買い替え費用の高さがネックとなっていますが、これから普及が進んでいけば今より価格が下がることも予想されます。今すぐ設置をお考えの方は補助金の活用を検討しましょう。太陽光発電システムと蓄電池をセットで導入する場合、自治体から補助金がもらえてお得に設置できる制度もあります。
電気代がまだまだ上がりそうな時代です。このタイミングで家庭用蓄電池の導入を検討してみませんか?