こんにちは。北陸型木の住まい研究会の山田です。
今回は快適な住まいづくりに欠かせない「断熱材」についてお話しします。一口に「断熱材」と言っても種類や性能は様々です。また家が建った後は天井や壁で見えなくなるので、名前は知っているけど実物は見たことが無いという方もいらっしゃると思います。しっかり納得して家づくりを進めていただくために、断熱材の種類やメリット・デメリット、また北陸での家づくりに最適な断熱材についてお話しします。
<1>断熱材はなぜ必要?
<2>種類別メリット・デメリット
<3>北陸での家づくりに最適な断熱材は…
<1>断熱材はなぜ必要?
現代の住宅で断熱材は当たり前に使われていますが、そもそもなぜ断熱材が必要なのでしょうか。冬に寒い思いをしないために必要だ、と思われる方が多いかもしれません。それももちろんですが、実は夏の暑さからも守ってくれています。熱を断つという文字の通り、外気の寒さ・暑さをシャットアウトするのが断熱材の役割です。つまり冬暖かく、夏涼しい家にするために断熱材は必要不可欠です。
さらに断熱材の性能レベルによっても、住んでからの快適さは大きく左右されます。快適な住まいづくりに求められる性能は「断熱性・防湿性・耐久性」の3つです。
【断熱性】
最も重要なのが断熱性能です。例えば冬で考えてみましょう。断熱性能が低いとエアコンやヒーターで暖めた空気の熱が外に逃げてしまうので、部屋を暖めるのにかなりのエネルギーや時間を要します。また暖かい空気は上昇し、冷たい空気は下に滞留するので、上下温度差が生じて「顔は暑いのに足元が寒い」といった不快感につながります。家全体の断熱性能を高めることで上下温度差の解消はもちろん、部屋間の温度ムラも軽減することができます。
【防湿性】
見落とされがちですが、湿気の通しにくさも重要なポイントです。私たちは炊事や洗濯、呼吸などによって毎日大量の水蒸気を出しています。水蒸気を含んで湿った空気が壁の中に侵入して結露を起こすと、断熱材にカビが生えます。また腐朽菌の発生で木材が腐り、湿った木材が好きなシロアリの餌食になってしまいます。湿気に強い断熱材を選ぶことや、必要に応じて防湿層を設けることが重要です。
【耐久性】
築年数が経てば断熱性能が落ちるのは仕方ない…と諦めていませんか?どの断熱材も経年劣化はしますが、種類によって劣化のスピードが異なります。劣化の要因は色々ありますが、例えば断熱材が湿気を吸って重くなったり重力に耐えられなくなったりすると、ずり落ちて隙間ができてしまいます。断熱材は種類によって形状も様々ですが、その中でもボードタイプの断熱材は自重による変形がしにくいです。さらにボードタイプの中でも気泡の構造や大きさによってガスの抜けやすさが異なるので、比較してより劣化しにくいものを選ぶと良いでしょう。
<2>種類別メリット・デメリット
今回は住宅で使われる断熱材を3つご紹介します。
①グラスウール
ガラス繊維を綿状にし、羽毛布団のように空気の層を作ることで断熱します。安価なため多くの住宅で使用されています。
【メリット】
・他の断熱材と比較して安価
・耐火性能や吸音性能が高い
【デメリット】
・湿気に弱いため防湿措置が必須
・自重でずり落ちて隙間ができるリスクがある
②吹付硬質ウレタンフォーム
薬剤を混合して発泡させる断熱材です。壁や天井に吹き付けると、むくむくと膨らんで固まります。
【メリット】
・吹き付けて発泡させるので気密性が高い
・強度が高く、衝撃に強い
【デメリット】
・表面の塗膜がカットされてしまうと湿気を吸いやすくなる
・仕上がりにムラが出やすい
③フェノールフォーム
原料にフェノール樹脂を使ったボード状の断熱材です。
【メリット】
・断熱性能が非常に高い
・湿気を通しにくい
・劣化が遅いので断熱性能を長く保てる
【デメリット】
・他の断熱材に比べて高価
・衝撃に弱い
<3>北陸での家づくりに最適な断熱材は…
一年を通して雨の日が多く高湿度、そのうえ暑さ・寒さが厳しい北陸。そんな気候下での家づくりに最適と言えるのが「フェノールフォーム」です。フェノールフォームは快適な住まいづくりに求められる「断熱性・防湿性・耐久性」を全て満たしています。
フェノールフォームの断熱性能は非常に高く、数ある断熱材の中でもトップクラスです。フェノールフォームの原料となるフェノール樹脂は熱を伝えにくい性質を持っていて、身近なところではフライパンや鍋の取手にも使われています。フェノールフォームを使えば外気の影響を受けにくいことはもちろん、暖冷房の効きが良くなって光熱費の削減にもつながります。
また防湿性にも優れています。北陸は1年を通して湿度が高く、気象庁のデータによると2022年の平均湿度は富山県富山市が77%、石川県金沢市が70%でした。湿度が高いと結露が発生しやすいため、北陸には湿気を通しにくい断熱材が適しています。フェノールフォームは他の断熱材に比べて湿気を通しにくいです。実際に断熱材を水槽に入れて実験したところ、フェノールフォームは1週間経っても浮いたままでした。湿気に強いフェノールフォームなら結露やカビ、木材の腐朽を防ぐことができるので、家を長持ちさせることができます。
さらに耐久性も高いです。フェノールフォームは小さな気泡を密集させたボード状の断熱材のため、重さでずり落ちたり重力で変形したりする心配がありません。さらに非常に細かい気泡構造なので、断熱性能の劣化スピードが非常に緩やかです。つまりフェノールフォームを使った家は年中快適に過ごせる上、新築時の快適さが長続きするということです。
このように「断熱性・防湿性・耐久性」を全て満たしており、高湿度な北陸に最適な断熱材と言えます。フェノールフォームを使えば快適に過ごせることはもちろんですが、燃えにくさやシックハウスの評価項目のひとつであるホルムアルデヒド放散等級がF☆☆☆☆であることなどから、安心して暮らすことができます
<まとめ>
今回は住宅で使われる3種類をご紹介しましたが、他にも色々な種類の断熱材があります。どの断熱材を使うかは標準仕様で決まっていることが多いので、まずは検討中の住宅会社さんに確認してみてください。まだ依頼先が決まっていない方は「断熱性・防湿性・耐久性」に優れた断熱材を使っているかを会社選びの基準にするのもいいですね。
断熱材は住んでからの快適性や家の耐久性に大きく関わります。住宅会社さんにお任せではなく、しっかりと納得した上で家づくりを進めましょう!