こんにちは。北陸型木の住まい研究会の山田です。
みなさんは、住宅の「パッシブ設計」という言葉をご存知でしょうか?パッシブ設計とは、住宅への自然光の取り込み、風通しのよい空間づくりなど、自然の力を最大限に活用して快適な暮らしを実現する建築設計手法です。このような工夫は、深い軒、障子、すだれ、縁側など、日本家屋にも古くから取り入れられてきました。先人たちは自然のエネルギーをうまく利用して日本の気候に合った家づくりをしてきたのです。
近年の家づくりでは断熱性能(UA値)や気密性能(C値)など性能値が大きく取り上げられていますが、年中快適に暮らすためにパッシブ設計は絶対に欠かせないポイントです。今回はパッシブ設計の中から「太陽光の活用」をテーマに快適な住まいづくりについて解説していきます。
1.太陽光の活用とは?
2.効果的に日差しをコントロールするには?
3.庇以外で日差しをコントロールする方法
<1>太陽光の活用とは?
部屋に差し込む太陽光は季節によって角度が変わります。太陽光の動きの変化を知って日差しをコントロールすることで、快適に暮らすことができます。
掃き出し窓1つからはコタツ1台分(約600w)の熱が入ってきます。快適で省エネに暮らすためには、この熱エネルギーを夏は遮り、冬は取り込むことがポイントです。日差しをコントロールするために欠かせないのが「庇(ひさし)」です。庇を長く(軒を深く)することで、夏のギラギラした日差しは遮り、冬の柔らかな日差しは室内の奥深くにまで届けることができます。
<2>効果的に日差しをコントロールするには?
季節に合った日差しコントロールのためには、ただ庇をつければ良いという訳ではありません。庇の長さや角度の設計が重要になってきます。適切な庇の長さは建物の高さと、その地域での太陽高度から算出します。
例えば北陸の場合、夏至の太陽高度は約77度です。平屋建てで床から天井までの高さが3m(3,000mm)の部屋だとすると、
3000÷cos13°=3,080
3,080の二乗+3,000の二乗を√(ルート)で割ると700
ざっくりの計算ではありますが、こちらの平屋建ての場合は庇が700mm(70㎝)あれば夏の日差しは入り込まずに済むということになります。
ただし北陸は重く湿った雪が積もるため、あまり庇を伸ばしすぎるのもおすすめできません。日差しの入り方と積雪の両方を考慮しながら、依頼先に適切な長さを検討してもらいましょう。
<3>庇以外で日差しをコントロールする方法
庇を適切に設計することで日差しをコントロールできますが、敷地や間取りの制約で庇をつけられない、デザイン面から庇をつけたくないこともあります。そのような場合は外付けブラインドやタープ、シェードで日差しを遮りましょう。遮光カーテンも対策にはなりますが、屋外で日差しをカットする方が圧倒的に有利です。また窓も工夫すると、冬の太陽熱をより活用できます。窓はできるだけ南側(±30度)に多く設け、冬に周囲の建物の影にならない設計をしましょう。
<まとめ>
日差しをコントロールして年中快適に暮らすためには、庇や外付けブランドなどで部屋の中に夏の日差しを取り込まず、逆に冬の日差しは取り込んで暖房効果を得ることがポイントです。庇は日差しをコントロールすることはもちろん、雨除けにもなるので雨の日が多い北陸にはぴったりです。また外壁への雨掛かりを抑えて外壁を傷みにくくするなど耐久性の面でも効果を発揮します。これから家を建てる方は庇の効果にも注目して、快適で省エネな家づくりを進められてはいかがでしょうか。