こんにちは。北陸型木の住まい研究会の澤田です。
家を建てる際、守らなければならない様々な決まりがあることを知っていますか?
代表的なものに「建築基準法」があります。これは私たちの生命や財産を守るために、建築物の敷地や設備、構造や用途などの最低基準を定めたものです。その他にも「建築物省エネ法」という法律もあり、実はこの2つの法律が2025年に大きく変わろうとしています。
これから家を建てることをお考えの方は、今回のブログを見ることで、何がどう変わるのかしっかりと確認し、変更内容を踏まえた家づくりができます。
1.建設業界の2025年、何が変わる?
2.省エネ基準義務化で何が変わる?
3.2030年にも基準が上がる?
建設業界の2025年、何が変わる?
2025年省エネ基準への適合が義務化されます。これまでオフィスビルなど一部の建物が対象とされていましたが、2025年度以降は、住宅を含む全ての新築の建物が断熱材の厚さや窓の構造などの基準を満たすことが求められるようになります。つまり2025年には現在の省エネ基準(等級4)を満たした省エネ住宅が最低ラインとなり、それより断熱性能が低い住宅は建てられなくなるということです。
ではこれまでの日本の住宅の断熱レベルはどうだったのでしょうか。
省エネ基準とは別に断熱性能を表す指標として「性能表示の断熱等性能等級」があります。等級の数値が大きくなるほど断熱性能が高いことを表し、住まいを新築する際のひとつのガイドラインとなっています。業界全体の断熱性能が上がってきていることから、2022年、上位等級である等級5~7が新設されました。しかし現在の省エネ基準は「等級4」と同等性能です。この基準は何度か変更を行なっていますが、断熱性能自体は平成11年に定められた「次世代省エネ基準」と言われるものとほとんど変わっていません。つまり日本の断熱基準は23年前のものがほぼそのまま維持されているのです。その上、義務化もされていないため、日本の住宅の断熱性能は先進国の中では最低レベルと言われているのが現状でした。
このような経過のもと、いよいよ日本でも省エネ基準の義務化がおこなわれようとしています。
省エネ基準義務化で何が変わる?
そもそもなぜ省エネ基準が義務化になるのでしょうか?その背景にあるのは「2050年カーボンニュートラルの実現」「2030年度温室効果ガス46%排出削減」という国の政策目標です。住宅の省エネについては、これまで何度も議論を重ね、その度に法改正が見送られてきた経緯がありますが、世界的な脱炭素の流れの中で、いよいよ日本も本腰を入れざるを得なくなったのが大きな理由です。
本当であれば2020年に義務化になる予定だったのですが、一度は見送られ、やっと2025年に義務化することになったのです。見送られた理由として、現場の混乱、審査が遅い、審査がなかなか通らず建設スケジュールが遅れるなどの影響がでるかもしれない。などの反対の声が多かったからということがあげられます。
ただ、現在建てられる家のほとんどは、既に義務化基準レベルに達しているため、慌てて断熱性能を上げなくても家が建てられなくなることはないでしょう。
大きく変わるポイントは「手続き」です。
これは、確認申請の中で「省エネ基準への適合性を審査されるようになる」ということです。
これにより特に義務化の開始直後には、家を建てる際の審査に時間がかかり、建設スケジュールが遅れてしまうという影響がでるかもしれません。
また各種優遇措置も適用基準があがります。2023年4月には、全期間固定金利型の住宅ローン「フラット35」の制度改正があり、省エネ基準レベルの断熱性能が必須となります。さらに2024年入居から住宅ローン減税は省エネ基準適合でないともらえなくなります。では住宅の性能は「省エネ基準に適合するものにしておけば間違いない」のでしょうか?
2030年にも基準が上がる?
実はそう簡単な話ではなく、次の基準引き上げ予定がすでに決まっています。
2030年には義務化の基準がZEH基準レベルへ引上げられる予定であり、建築物分野での省エネ対策が加速しているのです。つまり、省エネ基準義務化が目的ではなく、ただの通過点であり、2030年には義務化基準がZEH水準まで上がります。最終目標は2050年カーボンニュートラルの実現です。
各種補助金も最低レベルの省エネ基準適合ではもらえなくなりました。2021年の「こどもみらい住宅支援事業」では省エネ基準レベルの住宅でも補助金をもらえていましたが、2022年の「こどもエコすまい住宅支援事業」では省エネ基準レベルの住宅では補助金がもらえなくなりました。今後も住宅レベルが上がることを想定し、最低でもZEHレベル、できれば等級6レベルの家を造ることをお勧めします。
まとめ
省エネ基準とは、国が定めた「省エネルギー基準(平成28年度基準)」のことを言います。2025年からはこの基準をクリアできない不適合住宅は新築することができなくなります。さらに2030年には義務化基準がZEH水準まで上がります。また各種優遇措置も適用基準があがります。2024年入居から住宅ローン減税は省エネ基準に適合しないともらえなくなります。
今後も基準が上がることを想定すると資産価値にも影響が出るかもしれません。家を売りたいと思ったとき、義務化基準満たさない住宅は次の購入者から敬遠されることにもなります。
つまり、これからは「ZEH水準の省エネ住宅」が新たに家を選ぶ基準になります。数年後、時代遅れにならないように、家の性能はよく考えて造りましょう。