第3回では断熱性能の高い家の見分けかたについて解説します。少し専門用語も入ってきますよ。
〈「おもてなし」から、「機能性」へ〉
昔の家と今の家とでは、断熱性能がまったく違います。それはなぜでしょうか。
30年前の家づくりは、「来客」を強く意識していました。キレイな和室に立派な床の間を設置して、何よりおもてなしを最優先事項にしていたのです。
そのため打ち合わせを行うのは、ご主人の役目。家事動線や収納などの優先順位が低く、とても使いにくい住居ばかりが建てられていました。
時代が変わり20年前になると、打ち合わせの多くを奥様と行うようになります。なぜなら外食の普及など家の外でイベントが行われるようになり、来客の数が少なくなっていったからです。
〈見えない部分を重視する傾向に〉
時を経てここ10年は、住まいに質を求めるようになりました。
住居における「質」とは、ズバリ住みやすさです。家事動線を考慮した間取りなど、「どんな暮らしをしたいのか」の視点から家を作るようになったのです。
その延長線上として、ここ最近の「性能重視の家づくり」があります。
以前なら、間取りや収納スペースなど見える部分ばかりこだわっていたところ、「断熱性」「耐震性」「耐久性」「防湿性」など構造性能に注目するようになりました。
つまり、「完成すると見えなくなる部分」を重視する人が増加しているのです。それはまた、完成してから直すのが大変なところでもあります。
出展:新建ハウジング+ONE 2019年4月号
一方、家を建てる際に、見えない部分について「打ち合わせしなかった」「検討しなかった」人もまだまだ多いです。キッチンや浴室と違い、見えないだけに具体的なイメージが湧きにくいのかもしれません。でも、特に「断熱性」に関してきちんと打ち合わせを行えば、実際に住んでから室内の快適さや光熱費の効果を強く実感できます。
見えないところにこだわった家づくりは、住み心地自体の満足度が高くなります。ですから見えない部分が及ぼす影響を重要視する必要があるのです。
出展:新建ハウジング+ONE 2019年4月号
〈断熱性能はUA値で判断する〉
ここまで読んでみて、断熱性能の必要性を理解してもらえたでしょうか。
でも見えない部分だけに、どの程度こだわればいいのか目安を知る必要があります。断熱性能の高さは、どのように判断すればいいのでしょうか。
それは国が定めた指標である、外皮平均熱貫流率 UA値(ユーエーチ)で確認できます。平成25年から断熱性能の基準として使用されていて、「熱の逃げやすさ」を数値化したものです。
数値が小さいほど屋内の熱が外へ逃げにくいことを表しており、簡単に言えば「性能が良い」ことになります。
壁や屋根、窓、床など、家の外と室内との境界を外皮と呼びます。外皮では常に熱の移動が発生しています。
これら全ての箇所から移動する熱(逃げる熱)を合計したものが、「外皮総熱損失量」です。
外皮平均熱貫流率 UA値は、この「外皮総熱損失量」を「外皮表面積」で割れば算出できます。
〈一応、日本にもUA値の基準はあるが…〉
また断熱性能の基準のひとつに、【次世代省エネルギー基準(次世代省エネ基準)】があります。
日本には、北海道から沖縄まで様々な気候がありますので地域を6つに分類し、その地域ごとにUA値の基準が定められています。
これを見て、「自分の家は基準値以下で良かった」と安心してはいけません。この数値は最低ラインなのです。世界の基準と比べると、かなり遅れをとっているのが現状です。
〈UA値の基準は、法律で定められていない〉
しかも日本は、「基準を満たす必要がある」といった法律はありません。そのため、「住宅会社に任せておけば、すべて大丈夫」なわけではないのです。
悪質な会社なら消費者が知らないのをいいことに、最低限の対策すら取らない場合もありえます。
家は、「不備があったから、すぐに建て直そう」とはいきません。基準に満たない住宅を作れば、生活の質は低下し、それを補うための経済的な負担が掛かります。
断熱性能は目には見えない部分ですが、住んでみれば、確実に肌で実感できます。
ここまで読んで断熱性能の大切さを理解した方は、今からどんな家を建てたいですか?UA値を一つの指標として、これからの家づくりにぜひ役立ててください。
次回のテーマは、「断熱性能を100%発揮するため、かかせないこと」です。「気密」について、詳しく解説します。
断熱性能の高い家づくりコラム