第1回は断熱性能の高い家の良い点についてお話しました。第2回では、健康面にスポットを当てて解説します。
お話に入る前に、世界と日本の住宅を比較してみましょう。先進各国では省エネや断熱性能に基準が定められています。一方、日本では省エネ基準は定められているものの、適合については努力事項としています。
国は2020年までにすべての新築住宅を義務化すると提言していましたが、2018年に延期を発表しました。現在では先進国中、最も緩い水準にとどまっています。
前回、「断熱性能の高さは快適な生活へつながる」と説明しました。快適なだけでなく、実際に健康への影響も大きいのです。イギリスでは、室温が健康に影響を与える報告書が提出されています。健康的な室温は21度。16度以下になると呼吸器障害や心疾患などのリスクが高まるとされています。
では断熱性能を高めることによって、健康にどのような変化が起きるのでしょうか。
<1 各部屋の温度差が小さい>
「冬に家の中が寒いのは当たり前」そんな風に思っていませんか。断熱性能の低い家では、冷暖房を点けている部屋とそうでない部屋との温度差は大きくなります。暖かいリビングから寒いトイレへ行ったときなど、急激な温度変化を感じているはず。
この急激な室温の変化は身体に大きな負担を与えています。ヒートショックという言葉を聞いたことがあると思います。急激な温度変化によって血圧や脈拍が大きく変動し、脳卒中や心筋梗塞などを引き起こす原因のひとつになっています。
持病のある方や高齢者は、特にヒートショックに注意が必要です。年間およそ19,000人がヒートショックなど入浴に関する事故で死に至ったと推計されています。交通事故の死亡者数よりも多いので驚きです。
人生100年時代、自宅は最も長い時間を過ごす場所です。その場所が病気の一因になることは避けたいですよね。
夜に暖房を止めた後も、暖かい熱を逃さずに朝を迎えられます。ベッドからすんなり起きて早朝の家事もスムーズに始められる、そんな利点もあります。
<2 免疫力の低下を防ぐ>
体温が1度下がると、免疫力が3割低下すると言われています。厚着すれば寒さは防げますが、冷たい空気を吸い込むと身体は冷えてしまいます。免疫低下によって気管支炎を引き起こすこともがあり、アレルギー発症の危険もあります。
断熱性能を高め温度差を少なくすればこれらの心配がなくなるほか、継続的に発生していた症状が緩和されるデータも出ています。温度差を少なくし、冬の寒さによる免疫力低下から家族を守りましょう。
<3 熱中症から身を守る>
熱中症といえば炎天下の屋外で起こるものと思いがち。実は自宅で発生する熱中症は、全体の約40%にものぼっています。
外の気温が35度の場合、太陽光の直接当たる屋根や外壁は50度を超えることもあります。蓄積した熱が住宅内に放熱され、エアコンを点けていてもなかなか効かない。またタイマーなどでエアコンを停止した後、どんどん室温が上昇して熱中症を引き起こすケースも見られます。
次のグラフは熱中症の発生場所のグラフになります。安全なはずの住居が、安全ではなくなってしまう。それは恐ろしいことです。断熱性能を高くすれば、強い日差しを防ぎ快適な涼しさを保つことができます。
ここまでの説明で、断熱性能の必要性は理解いただけましたか。実はこの断熱性能は、数値化による比較が可能となります。その値を外皮平均熱貫流率(UA値)と呼び、数値が低いほど高断熱といえます。
次回はこのUA値の読み解き方を解説します。ぜひマスターして断熱性能の理解を深めてください。
断熱性能の高い家づくりコラム